正社員の副業、バイトとの掛け持ち(Wワーク)で残業代分の割増賃金はもらえるのか?
はじめに
正社員勤務だけでなくバイトも掛け持ちで行っている場合、残業代がどうなるのかもきになるところです。残業代とは法定労働時間を超えた勤務に対して支払われるものです。そこでまずは労働基準法では法定労働時間や残業代が、どのように定められているのかについて見ていくことにします。
法定労働時間と残業代とは?
法定労働時間とは
労働基準法では通常一日8時間、一週間で40時間を法定労働時間と定め、それを超えて働かせてならないと定めています。
残業させるための条件と残業代
もし仮に法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働をさせたい場合は、事前に労働者の過半数が所属する労働組合か、なければ労働者の過半数を代表するものと労使協定を締結し、就業規則にも記載する必要があります。これを36協定といいます。
ただし超過時間に対しては通常賃金の2割5分増しの割増賃金(時間外労働手当)を出さなければなりません。この割増賃金が残業代になります。
掛け持ちで残業が発生した場合?
掛け持ちでも時間は通算される
それでは正社員勤務とアルバイトの掛け持ちで、法定労働時間の1日8時間や週40時間を超えた場合はどうなるのでしょうか。労働基準法第38条1項では次のように定めています。
労働基準法第38条第1項
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
つまり掛け持ちにおいても通算で法定労働時間を超えた場合には、残業代を支払わなければならないのです。
残業代は後に契約した方が払う
それでは実際に正社員とバイトの掛け持ちで、残業が発生した場合にはどちらが残業代を支払うことになるのでしょうか。これは後になって契約した方が支払います。
例えば先に雇用契約をした側(A社)で6時間勤務した後に、後で雇用契約をした側(B社)で4時間勤務したとします。この場合労働時間を通算すると10時間で2時間分は残業代を支払わなければなりませんが、支払い義務は後で雇用した側となります。
時間が早いかどうかは関係なく、先に契約したかどうかで決まります。例えば後の4時間勤務する側を先に契約していたとしたら、残業代の支払い義務は最初の6時間側の雇用先が受け持つことになります。
なぜ後で雇用契約した側に支払義務があるのか?
なぜ後に雇用契約をした側に残業代の支払い義務があるのかというと、後に雇用契約を締結する側は先に雇用契約を締結したA社のことを把握したうえで、雇用契約を結ぶがどうかを判断し、その上で雇用契約を結べる立場にあるからです。
一方先に雇用契約を結ぶ側は、後に結ばれる雇用契約の内容をは把握することはできません。なので割増賃金は先に締結された雇用契約を把握できる立場にある、後から雇用契約を結ぶ側が負担することになります。
先に雇用契約した側が払う場合も
なお先に雇用契約をした側が残業代を支払う場合もあります。例えば先に雇用契約をしたA社で4時間勤務し、後に雇用契約したB社で4時間勤務したとします。A社が労働者がB社で4時間働いていることを知っていたうえで、労働時間を延長した場合は、延長分の残業代はA社が負担することになります。
残業が深夜労働と重なる場合
割増賃金は時間外労働手当である残業だけに発生するわけではありません。ほかにも夜10時から深夜5時の深夜労働にも深夜労働手当が発生します。こちらも通常賃金の2割5分増しの賃金です。
残業と深夜労働が重なった場合は時間外労働手当の2割5分増しと、深夜労働手当の2割5分増しが合算され、合計で5割増しの割増賃金を支払わなければなりません。
例えば夕方の4時から深夜の2時まで10時間働いたとします。4時から10時までの6時間は通常の賃金です。10時から12時までは深夜労働手当の2割5分増しが加算されます。12時から2時まではさらに残業代も加算され合計で5割増しの賃金となります。
実際に掛け持ちで残業代は支払われるのか?
採用が敬遠される傾向にある
ここまでは法律上の話をしてきましたが、では正社員のバイトや副業での掛け持ちでは残業代は支払われるのでしょうか。実際のとこ残業代が支払われるケースはまれなようです。
そもそも後で雇用契約を結ぶB社は、採用の時点で掛け持ちであることが分かった場合、割増賃金を支払う可能性が高くなるため、採用自体及び腰になる傾向が高くなります。というよりも採用されないケースの方が多いでしょう。なぜなら掛け持ちでない人を雇った方が、割増賃金を支払う必要がない分お得だからです。
就労時間の確認も必要になる
割増賃金を支払う側であるB社はまずは、A社での労働時間を確認する必要があります。労働者本人からの証言に頼る方法もありますが、虚位の証言をするなど不正の余地が入りやすい問題があります。
A社から就労時間証明書の提出を求める方法もありますが、A社、B社の両方に手間のかかる作業です。労働時間の確認に手間や不正の余地などの問題があり、割増賃金の支払い義務も発生しやすいとなると、B社が掛け持ちでの雇用に及び腰になるのもある意味当然だといえます。
掛け持ちのデメリットはA社にも
掛け持ちのデメリットは後で雇用契約を結ぶB社のほうだけにあるわけではなく、先に正社員として採用しているA社の方にもあります。就労時間確認の手間がかかる可能性もありますし、何より本来なら残業代を支払わなくてもいいのに、残業代を支払わなくてはならないケースも出てきます。
例えば上記のケースでは6時間勤務で、本来なら2時間は残業代を支払う必要なく残業させることができます。しかしながら掛け持ちでB社で4時間働くとなると、その2時間には割増賃金が発生します。つまり本来なら残業代を払わなくても就労させることができる時間を、掛け持ちによってB社で消費されてしまうのです。
掛け持ちの事実を言わないケースも
このように掛け持ちであることを打ち明けたうえで求職活動をすると、採用されにくくなるため、求職側もその事実を伏せたうえで求人活動をするというケースも少なくないようです。
また就労の途中で掛け持ちの事実を打ち明けた場合、割増賃金の発生を嫌って、雇用打ち切りを持ち出される可能性があります。そのため掛け持ちの事実を打ち明けないまま働き続けるというケースも多いと考えられます。
法律上は掛け持ちでも残業代は支払わなければならないのですが、実際は支払われるケースはまれです。また掛け持ちの事実を打ち明けることで、就労自体が困難になることも予想されます。残業代を請求する場合は、こうした点も踏まえたうえで行うべきだと言えるのではないでしょうか。
まとめ
この記事を書いた人
kain
お仕事広場の管理人のkainです。2003年より当サイトを運営。長い運営実績をもとに、就職転職サイト、派遣サイト、アルバイトサイトのおすすめや仕事に関する疑問、悩みについての記事を多数執筆。
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